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東京地方裁判所 昭和59年(行ウ)85号 判決

東京都渋谷区神南一丁目一〇番六号

原告

ゴルフ産業株式会社

右代表者代表取締役

花野登樹雄

右訴訟代理人弁護士

横井治夫

東京都渋谷区宇田川町一丁目三番地

被告

渋谷税務署長 人見國夫

右訴訟代理人弁護士

斉藤健

右指定代理人

江口育夫

主文

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が昭和五八年四月三〇日付けで原告の同五五年四月一日から同五六年三月三一日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税についてした更正(以下「本件更正」という。)のうち、所得金額五八五万二二七四円(納付すべき税額一五九万二一〇〇円)を超える部分及び重加算税の賦課決定(以下「本件重加算税賦課決定」という。)を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  課税処分等の経緯

原告の本件事業年度の法人税について、原告のした青色申告書による確定申告、これに対して被告のした本件更正、過少申告加算税の賦課決定及び本件重加算税賦課決定並びにそれらの不服審査の経緯は、別紙1記載のとおりである。

2  不服の範囲

本件更正のうち、所得金額五八五万二二七四円(納付すべき税額一五九万二一〇〇円)を超える部分及び本件重加算税賦課決定につき、原告は、不服であるから、その取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1の事実は認める。

三  抗弁

1  本件更正の理由

(一) 更正の内訳

原告の本件事業年度の法人税に係る本件更正の内訳は別紙2のとおりである。

(二) 計上洩れ株式譲渡収益について

(1) ニツソーの株式

訴外日本創興株式会社(以下「ニツソー」という。)の昭和五四年九月二一日当時の発行済株式総数は八万株(一株当たりの額面金額五〇〇円)であり、その株主の内訳は次のとおりであつた。

田中秀美 一万二〇〇〇株

花野登樹雄(以下「花野」という。) 二万〇〇〇〇株

渡辺保夫(以下「渡辺」という。) 八〇〇〇株

原告 四万〇〇〇〇株

(2) 株式の売買

原告、花野及び渡辺の三名は、昭和五五年四月二五日、その所有する訴外ニツソーの全株式合計六万八〇〇〇株を代金六五〇〇万円で、訴外西山茂行、同那須真美子、同西山興業株式会社(以下「西山興業」という。)、同株式会社大宮国際ゴルフ場(以下「大宮国際」といい、以上の四名を「西山茂行ほか三名」という。)に売り渡し(以下、右売買を「本件売買」という。)、その旨の株式売買契約書が作成された。

(3) 本件売買の裏付けとなる事実

ア 代金の支払い

西山茂行ほか三名は、本件売買当日、別紙3のとおり、各人名義の銀行預金から各人の譲受代金に相当する金員の払戻しを受け、銀行振出の自己宛小切手を取り組んだうえ、右小切手を原告の代表者の花野に交付した。

イ 譲受人の会計処理

譲受人である西山興業は昭和五五年四月二五日に、同じく大宮国際は同月三〇日に、それぞれ取得したニツソーの株式各一万六五〇〇株を各代金一五七七万円で買い入れた旨の記帳をし、これを自社の資産として有価証券勘定に計上している。

ウ ニツソーの債務額の増減状況

訴外有限会社西山牧場(以下「西山牧場」という。)は三億円を、同ムカワ馬事株式会社(以下「ムカワ馬事」という。)は一億円を、それぞれ昭和五四年五月一八日に訴外博栄商事株式会社(以下「博栄商事」という。)にニツソーへの貸付資金として貸し付け、博栄商事は、同日ニツソーに対し右四億円を貸し付けた。

昭和五五年三月三一日現在の博栄商事に対する右貸付金の残高は、西山牧場が三億円、ムカワ馬事が三三一〇万円であつたが、右博栄商事の借入金債務は、昭和五五年四月三〇日をもつて、ニツソーが免責的に引き受け、同時に博栄商事とニツソー間の債権債務は消滅した。

そして、西山牧場及びムカワ馬事は、同年五月一日に、ニツソーの右債務引受に基づき、同年四月三〇日現在の博栄商事に対する右貸付金の残額をニツソーに対する貸付金とする旨の会計処理を行い、右貸付残額に対する同日以後の弁済額については、ニツソーから受け入れている旨の会計処理を行つている。

同年五月一日以降の西山牧場及びムカワ馬事のニツソーに対する貸付金の増減の状況は別紙4のとおりであるが、同日現在の貸付金の残高は同年三月三一日当時の残高と変わらず、両社の会計処理上相手方勘定を有価証券とする弁済の受入れは見られない。

(4) 譲渡収益

本件売買による原告の譲渡収益の額は、原告の譲渡株式数四万株を譲渡株式総数六万八〇〇〇株で除し、これに譲渡価額六五〇〇万円を乗じた額、三八二三万五二九四円と算出される。

(三) 雑損失とした株式価額の損金否認

原告は、ニツソーの株式四万株の取得価額二〇〇〇万円を出資金勘定に計上していたが、本件事業年度において右金額を雑損失として損金の額に算入した。

しかし、前記1(二)のとおり、本件売買に当たり、損失はなかつた。

(四) 交際費等の損金不算入額

原告が福利厚生費及び視察出張費として本件事業年度の損金の額に算入したもののうちには、従業員の慰労ゴルフのための支出金三五万九三六二円が含まれているところ、右支出金は租税特別措置法六二条の「交際費等」に該当するものであり、また、原告の前事業年度の更正処分に伴い、基準年度の支出交際費等の額が減少したことに基づいて交際費等の損金算入限度超過額が変動することとなるため、これを再計算すると原告が確定申告に際し損金不算入とした額のほかに、更に一七二万六八五一円が損金不算入額として加算されるべきこととなる。

(五) 繰越欠損金の控除過大額

本件事業年度の確定申告において繰越欠損金四七〇〇万五七八六円を控除したが、原告の前事業年度の更正に伴い、右欠損金の額が四六八八万五七八六円に減少したので、その差額一二万円は控除過大となつた。

(六) 株式譲渡原価認容

前記1(三)において雑損失を否認したニツソーの株式四万株の取得価額二〇〇〇万円は、前記1(二)の売買に係る原価として損金の額に算入されるべきものである。

2  本件重加算税賦課決定の理由

原告は前記のとおりニツソーの株式を売り渡して、三八二三万五二九四円の収益を得ているにもかかわらず、これを帳簿に計上せず、右所得を除外して確定申告書を提出した。

右の行為は、国税通則法六八条一項に規定する国税の課税標準又は税額等の計算の基礎となる事実を隠ぺいし又は仮装したところに基づき納税申告書を提出した行為に該当するので、右株式譲渡収益の額を重加算税対象所得として算出した額、すなわち法人税額(昭和五九年改正前の同法一一八条三項の規定により一〇〇〇円未満切捨て)に一〇〇分の三〇の割合を乗じて計算した金額である四五四万六八〇〇円を重加算税の額として賦課決定したものである。

右重加算税の額の計算内訳は、別紙5のとおりである。

四  抗弁に対する認否及び原告の主張

1  抗弁1について

(一) (一)の事実は認める(ただし、別紙2の(一)の申告所得金額並びに(四)及び(五)の加算は認め、その余の各項目の加減算の正当性を争う。)。

(二) (二)(1)の事実は認める。

(二)(2)のうち、被告主張の事実を記載した株式売買契約書が作成されたことは認め、その余の事実は否認する(右契約書の記載内容が真実に反することは、後述のとおりである。)。

(二)(3)の各事実は認める。

(二)(4)は争う。

(三) (三)前段の事実は認め、後段は争う。

(四) (四)の事実は認める。

(五) (五)の事実は認める。

(六) (六)は争う。

2  抗弁2について

抗弁2は争う。ただし、別紙5の計算関係を認める。

3  原告の主張

(一) ニツソーは、昭和五四年五月一八日、実質的には、博栄商事を介して、西山牧場及びムカワ馬事(以下併せて「西山興業グループ」という。)から合計四億円を借り受け、担保としてニツソーカントリークラブ稲敷コースの会員資格保証金預り証書五〇〇枚(額面合計九億円)と渡辺の所有するニツソーの株式二万株及び訴外江原明義(以下「江原」という。)の所有するニツソーの株式八〇〇〇株を差し入れた。

(二) 花野は、同年九月三日、渡辺の所有する右株式のうち一万二〇〇〇株及び江原の所有する右の全株式八〇〇〇株を担保に入つたまま譲り受けた。

(三) 原告は、同月二一日、増資によつてニツソーの株式四万株を取得した。

原告は、同年一〇月一日、右の株式四万株を実質的には、博栄商事を介し、西山興業グループにニツソーの債務の担保として差し入れた。

(四) 原告らは、右担保差し入れの際、借入金を期限に返済できない場合、無償かつ無条件で債権者ら又はその指定する第三者に譲渡することを約していた。

(五) ニツソーの借入金債務の返済期限は最終的に昭和五五年五月一七日とされたが、右期限までに完済されなかつたため、担保物件であつたニツソーの株式六万八〇〇〇株は西山興業グループが指定した西山茂行ほか三名に無償かつ無条件で譲渡された。

(六) 西山興業グループは、ニッソーの経営権の取得に伴つて、ニツソーの旧債務を返済するため六五〇〇万円を支出したが、その形式的処理のために株式売買契約書が作成されたに過ぎない。

(七) 抗弁1(二)(3)イ及びウ記載の会計処理及び貸付金の増減状況は、西山興業グループが取得したニツソーカントリークラブ稲敷コース会員権の販売代金支払いの為の〈専〉手形を取り立てる便宜上のものであるから、本件売買が有つたことの裏付けとはならない。

五  原告の主張(右四3)に対する認否

1  原告の主張(一)の事実のうち、ニツソーへの貸主及びニツソーの担保差入れ先が西山興業グループであることは否認し(ニツソーへの貸主及びニツソーの担保差入れ先は博栄商事である。)、その余は認める。

2  同(二)の事実は認める。

3  同(三)の事実のうち、原告所有の株式四万株の担保権者が西山興業グループであることは否認し(担保権者は博栄商事である。)、その余は認める。

4  同(四)の事実のうち、無償かつ無条件とする点は否認し、その余は認める。

5  同(五)の事実のうち、担保物件であつたニツソーの株式六万八〇〇〇株が西山茂行ほか三名に譲渡されたことは認め、その余は否認する。

6  同(六)及び(七)の事実は否認する。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の各記載を引用する。

理由

一  請求原因について

請求原因1(課税処分等の経緯)の事実は当事者間に争いがない。

二  更正の理由について

1  更正の内訳

被告が抗弁1(一)(更正の内訳)のような内容の本件更正をしたこと、そのうち、原告の本件事業年度の法人税に係る申告所得金額が四〇〇万五四二三円であり(別紙2番号(一))、交際費等の損金不算入額として一七二万六八五一円(同番号(四))、繰越欠損金の控除過大額として一二万円(同番号(五))をそれぞれ加算すべきことは、いずれも当事者間に争いがない。

2  株式譲渡収益の存否

(一)  抗弁1(二)につき、(1)(ニツソーの昭和五四年九月二一日当時の株主構成)の事実、(2)のうち、被告の主張する内容の記載のある昭和五五年四月二五日付け株式売買契約書が作成された事実並びに(3)ア(代金の支払い)、(3)イ(譲受人の会計処理)及び(3)ウ(ニツソーの債務額の増減状況)の各事実は、いずれも当事者間に争いがない。

(二)  原告の主張(事実摘示第二の四3)につき、(一)(ニツソーの四億円借り入れ及び担保提供)のうち、ニツソーへの貸主及びニツソーの担保差入れ先の点を除くその余の事実、(二)(花野の二万株取得)の事実、(三)(原告の四万株取得及び担保提供)のうち、担保権者の点を除くその余の事実、(四)(担保の趣旨)のうち、無償かつ無条件とする点を除くその余の事実、(五)(担保権の実行)のうち、担保物件であつたニツソーの株式六万八〇〇〇株が西山茂行ほか三名に譲渡された事実は、いずれも当事者間に争いがない。

(三)  成立に争いのない甲第一ないし第三号証の各一、二、第四、第五号証、第六、第九号証の各一、二、第一〇号証、第一二号証の一、二、第一六号証の一ないし九、乙第一、第三号証(以上のうち、甲第一、第二、第九号証の各一、二、乙第一、第三号証は、いずれも原本の存在にも争いがない。)、証人児玉義昭の証言により原本の存在と成立が認められる甲第一三号証の一ないし三、第一四号証の一、二、第一五号証の一ないし三、弁論の全趣旨により成立が認められる乙第二号証の一、証人有竹康二及び同児玉義昭の各証言(但し、いずれも後記の一部採用しない部分を除く。)並びに弁論の全趣旨を総合すれば、次の各事実が認められる。

(1) 原告は、ニツソーの親会社であつて、ニツソーが経営するニツソーカントリークラブの会員募集を業としていた。

ニツソーは、昭和五四年ころ、多額の負債を抱えており、特に訴外株式会社山住産業(以下「山住産業」という。)からの借入残高三億五〇〇〇万円及び訴外黄木博道(以下「黄木」という。)からの借入残高四三〇〇万円については返済が急がれたため、原告の当時の代表者の一人であつた訴外児玉義昭(以下「義昭」という。)を介し、博栄商事の代表者で同人の兄の児玉博隆に四億円の融資の斡旋を依頼したところ、同年五月一八日に西山興業グループの一員である西山牧場が三億円、同じくムカワ馬事が一億円をそれぞれニツソーへの貸付資金として博栄商事に貸し付け、同社が同日、その四億円をニツソーに貸し付けることとなつた。そして、それに伴い、返済期限を同年六月一七日とし、担保として、前記のニツソーの株式及び会員資格保証金預り証書のほかにニツソー振出しで原告及び義昭裏書に係る額面四億円の約束手形、ニツソーカントリークラブ会員権の代金として授受される〈専〉手形を各交付し、他方、山住産業及び黄木の有する根抵当権の移転をする旨の約定が、西山牧場及びムカワ馬事と博栄商事との間及び博栄商事とニツソーとの間において、それぞれ結ばれた。

なお、右各返済期日は、後に昭和五五年五月一七日とそれぞれ変更された。

(2) 西山牧場及びムカワ馬事がニツソーに直接の貸付をしなかつたのは、ニツソーに信用が不足していたため、西山牧場及びムカワ馬事からの要望によるものであつた。

したがつて、右貸付けに関する公正証書の作成、金員の授受担保の差入れ、支払、弁済の交渉等はすべてニツソーと博栄商事との間、次いで、博栄商事と西山牧場及びムカワ馬事との間でそれぞれされた。博栄商事は、西山牧場とムカワ馬事との間の約定利率に日歩二銭を加えた約定利率でニツソーに貸し付けた。

(3) ニツソー及び渡辺が連名で博栄商事に差し入れた昭和五四年五月一八日付け「念証」(甲第一号証の二)には「幣社振出約束手形、金四億円也が支払期日(借入機関満期日)に決済できざる時は当該担保物件を現状のまま貴社又は貴社指定の第三者に譲渡されても何等異議ありません。この場合、当方の承諾無く処理されることに併せて異議ありません。」との記載があつた。

また、ニツソー、原告及び花野の連名で博栄商事に差し入れられた同年一〇月一日付け「念書」(甲第九号証の二)にも同趣旨の記載があつた。

(4) ニツソーは、同年五月二一日から同年一一月七日までの間、ゴルフ会員権の販売により取得した〈専〉手形額面合計三億九一九五万五三六五円分を博栄商事に手渡したが、昭和五五年三月三一日までに利息のほか、元金は六六九〇万円を返済し得たに留まつた。博栄商事の同額の元金返済はムカワ馬事の貸金債務に充当された。

(5) ニツソーは、同年四月中旬ころ、前記借入金の返済が期限までにできない見通しとなつたため、貸主の博栄商事及びその貸主の代理人らと担保権の実行等について打ち合わせをした。その過程において、ニツソーの代表者の一人である花野からの簿外借入金が六五七〇万円あり、ニツソーの小切手及び約束手形が同額振り出され、第三者の手に渡つていることが判明し、ニツソーはその決済資金として六五〇〇万円を必要とすることとなつた。

そのため、同月二五日、被告主張抗弁1(二)(2)のとおりの株式売買契約書が作成され、代金の支払いがされた(右の事実は当事者間に争いがない。)。

(6) 博栄商事の西山牧場及びムカワ馬事に対する借入金債務は同月三〇日をもつて、ニツソーが免責的に引き受け、このためニツソーの博栄商事に対する借入金債務は同日消滅することとなつた。以上の認定に反する甲第一一号証、証人有竹康二及び同児玉義昭の各証言の一部は、前掲各証拠に照らし、採用することができない。

その他、右認定を左右する的確な証拠はない。

(四)  右(三)の認定事実及び前記(一)及び(二)の争いない事実を総合すれば、原告らが博栄商事に差し入れたニツソーの株式六万八〇〇〇株(額面合計三四〇〇万円)は担保権が実行されることなく、原告らから西山茂行ほか三名に対し、昭和五五年四月二五日に代金六五〇〇万円で売り渡され、その代金が支払われたこと(株券の引渡しは、簡易引渡の方法による。)が認められる。

(五)  以上によれば、原告の譲渡収益は抗弁1(二)(4)のとおり、三八二三万五二九四円と算出される。

3  雑損失及び株式譲渡原価について

抗弁1(三)前段(雑損失計上)の事実は当事者間に争いがない。しかし、前記のとおり、本件売買において、原告に損失があつたとはいえないから右計上額二〇〇〇万円は雑損失として控除すべきではなく、同額の取得価額を株式譲渡原価として損金の額に算入すべきものである。

4  所得金額

そうすると、原告の所得金額は、前記1の加算のほか、株式譲渡収益計上洩れ三八二三万五二九四円(別紙2番号(二))及び雑損失とした株式価額の損金二〇〇〇万円(同番号(三))を加算し、株式譲渡原価二〇〇〇万円(同番号(七))を減算した結果である四四〇八万七五六八円となり、これと所得金額が同額である本件更正は適法である。

三  重加算税の賦課決定について

原告が株式譲渡収益を帳簿に記帳しなかつたこと、右所得を除外して確定申告書を提出したことは、弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。

また、原告がその所有するニツソーの株式を売り渡したことは前記のとおり、株式売買契約書の存在及び代金の支払い事実等から明白であつたというべきであるから、原告は、課税標準の計算の基礎となる事実を隠ぺいしたところに基づいて納税申告書を提出したもの(国税通則法六八条一項)というべきである。

しかして、重加算税の計算関係については別紙5のとおりであることが当事者間に争いがないから、本件重加算税賦課決定は適法であると認められる。

四  結論

よつて、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鈴木康之 裁判官 太田幸夫 裁判官 加藤就一)

(別紙1)

課税等の経緯

〈省略〉

(別紙2)

更正の内訳

〈省略〉

(別紙3)

支払資金の出所

〈省略〉

(別紙4)

西山興業グループ二社のニツソーに対する貸付金の増減状況

1. 有限会社西山牧場

〈省略〉

2. ムカワ馬事株式会社

〈省略〉

(別紙5)

重加算税額の計算内訳

1. 更正処分により増加した所得金額の内訳

(1) 増加所得金額…40,082,145円

44,087,568円(更正後所得金額)-4,005,423円(申告所得金額)

(2) (1)の内訳

イ 重加算税対象所得金額…38,235,294円

ロ 過少申告加算税対象所得金額…1,846,851円

2. 重加算税対象所得金額に対する法人税額の計算

(1) 重加算税対象所得金額以外の所得金額…5,852,274円

44,087,568円(更正後所得金額)-38,235,294円(上記1の(2)のイ)

(2) (1)に対する法人税額…1,638,560円

5,852,000円(上記(1))×28%

(3) 控除所得税額等…46,403円

(4) 差引法人税額((2)-(3))…1,592,157円

(5) 更正後法人税額(所得税額控除後)…16,748,397円

(6) 差引重加算税対象法人税額((5)-(4))…15,156,240円

3. 重加算税額の計算

重加算税額…4,546,800円

15,156,000円(上記2の(6))×30%

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